ニオイテンジクアオイ油ってどんなもの?
ニオイテンジクアオイ油は、天然植物の精油成分になります。
「ニオイテンジクアオイ」って知っていますか?
あまり聞いたことがない植物名ですよね。
初めてその名前を聞いたとき、私はどんな植物かわかりませんでした。
化粧品原料やアロマテラピーで使う精油成分のゼラニウムは、「ローズ・ゼラニウム」といってローズに近い芳香を放つ品種で、和名を「ニオイテンジクアオイ」と呼ぶそうです。
ローズゼラニウムの芳香成分のゲラニオールは蚊の禁忌作用があるので、夏場の虫よけ対策として庭先に飾っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それではどういった特徴があるのか見ていきましょう!
★ 化粧品用途別の表示
化粧品での表示名は次のように表記されてあります。
用途 | 表示名 |
化粧品の成分表示 | ニオイテンジクアオイ油 |
医薬部外品(薬用化粧品)の成分表示 | |
INCI名(化粧品の国際表記、英語名) | Pelargonium Graveolens Oil |
成分の性質や安全性について
化粧品成分におけるニオイテンジク油は、香りづけの香料の目的で配合されています。
精油成分に含まれているゲラニオールには抗菌作用や皮脂の分泌、さらには皮膚の弾力回復といった肌によい作用も知られており、直接肌につけたままにする化粧水や乳液、メイキャップ用品などにも配合されています。
また、精油は揮発性の親油成分になりますが、同時に抽出される水溶性のエキス、「エキスアオイエキス」は香料の他に肌の保湿や肌を柔らかくするエモリエント成分として化粧品に配合されています。
ニオイテンジク油の成分の特徴、安全性は下の表にまとめてみました。
★化粧品原材料のまとめ(分類、用途、主要な成分の構造と由来)
成分の分類 | 香料(植物精油、エッセンシャルオイル) |
化粧品での配合目的・用途 (米国パーソナルケア製品協議会で名称登録時の用途) |
香料 |
香りの特徴 | バラのようなフローラルな香りとともに爽やかなグリーンが合わさった香り |
期待される効果・作用※ (アロマテラピーの教科書 より一部参照 *文献 2) |
作用:鎮静、自律神経調節作用、皮脂の分泌の調節、皮膚軟化、皮膚弾力回復、抗菌、止血、抗ウィルス、抗真菌 蚊の忌避作用 など |
構造 (含有量は文献 3の精油の安全性ガイド 第2版(2018年) 参照 ) | 香料の主要な成分:
(-)–シトロネロール(モロッカン:18.6-37.8%) ゲラニオール(モロッカン:15.1-20.6%) |
主産地 | モロッコ、北アフリカ、ヒマラヤ |
成分の由来原料(基原) | フクロソウ科のローズゼラニウム(学名:Pelargonium Graveolens)の葉と花を水蒸気蒸留法で抽出したもの |
安全性について
(文献 3の精油の安全性ガイド 第2版(2018年) より一部参照 ) |
非光毒性、非光アレルギー性※の精油です。
※光毒性とは、皮膚についた成分が太陽光のような光の照射によって反応性の高い物質に変化して、悪影響を及ぼす急性毒性のことです。 さらにアレルギー症状を起こすようなものは、光アレルギー性といいます。 ⇒参照:光毒性のメカニズムとは。光毒性のあるグレープフルーツ果皮油より
光に対する皮膚への悪影響はないものの、IFRA(国際香粧品香料協会)ではアレルギーを引き起こす「ゲラニオール」という皮膚感作性成分を含有している精油に指定しています。 「ゲラニオール」の洗い流さないタイプの化粧品(leave-on)、つまり塗布したままにしておく化粧品の制限値が5.3%までとなっているので、ニオイテンジクアオイ油(ゼラニウム・オイル)の最大皮膚使用量は17.5%となっています。
ところが、臨床試験ではアレルギー報告例が少なく、本当はアレルギーが誘発しにくい精油ではないかと言われています。 例えば、皮膚炎患者に20%濃度でパッチテストを行った試験では、陽性率1.93%しかなかったということや(2009年sugiharaらの研究より、文献3)、10%濃度の精油を25人に試したところ刺激性や感作性がなかったという報告もあります(1975年Opdykeらの研究より、文献3)。 そもそも化粧品での配合量は1%にもみたないので、皮膚感作性の可能性はかなり低いものと考えられています。 さらに、シャンプーやトリートメントといった洗い流すタイプの化粧品であれば、さらに皮膚へのリスクは低下します。 そうは言っても成分の組み合わせによっては、作用が強まる可能性は否定出来ないので、化粧品を使う際には様子をみて使い、何らか異常が出た際には使用を中止してくださいね。 |
※あくまで化粧品原料であり、状態が確実に改善することが保証されたものでないことをご理解してください。
精油に含まれている芳香成分の種類と割合について
ニオイテンジクアオイ油の成分と割合は次のようになります。
【主要な成分の割合】
- シトロネロール 18.6-37.8 %
- ゲラニオール 15.1-20.6%
- リナロール 5.6-10.0%
- ギ酸シトロネリル 5.5-8.1%
- ギ酸ゲラニル 2.8-6.6%
- イソメントン 3.8-5.6%
- 10-epi-γ-オイデスモール 0-5.2%
- シトロネリルプロピオネート 0-2.5%
- ゲラニルチグレート 1.1-2.4%
- 酢酸ゲラニル 0.4-2.4%
和名のニオイテンジクアオイは、ゼラニウムに分類される植物ですが、園芸品種のゼラニウムとは別物の場合があります。
園芸品種のゼラニウムは、フクロソウ科のフクロソウ属に分類されているのに対して、ニオイテンジクアオイは、フクロソウ科のテンジクアオイに分類されているものになります。
200年ぐらい前までこの2つの植物が同じ属で合った名残が未だに続いていることに起因しています(文献4)。
ちなみに、ニオイテンジクアオイ油は産地によって芳香成分の割合が変わってきます。
先程のリストの精油成分の割合は、産地がモロッコの「モロッカンタイプ」の数値を参照しました(精油の安全性ガイド 第2版(2018年) 文献 3)。
ニオイテンジクアオイの成分は、ローズの甘い香りに関係しているシトロネロールやゲラニオールを多く含んでいるのが特徴です。
そういった背景から別名でローズ・ゼラニウムとも呼ばれていますし、ローズ油の代替品精油としても使われてきた歴史があります。
※主要な芳香成分の効果については、以下のリンクから
★シトロネロール
★ゲラニオール
★リナロール
参考文献
*1) 日本化粧品工業連合会 編集 (2013年) 日本化粧品成分表示名称事典、付録5、p616-p751
*2)和田 文緒 (2008) アロマテラピーの教科書―いちばん詳しくて、わかりやすい!
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