精油・エッセンシャルオイルに含まれているαピネンは、どのような芳香成分?
α-ピネンは、爽やかな針葉樹のような香りが特徴の芳香成分で、ほとんどの精油に存在します。
その中で、特にローズマリー、サイプレス、セントジョーンズワート、ティーツリー(レモンセッド)といった植物に多く含まれています。
化学構造上、モノテルペン炭化水素に分類されているもので、同属のものとしてはβ-ピネン、サビネン、カンフェン、d-リモネンなどがあります。
⇒参照:d-リモネンが多く含まれているグレープフルーツ果皮油について
私が調べた限りでは、α-ピネンは単体で化粧品には使われていないようです。
化粧品からα-ピネンが検出される場合は、植物の精油やエキス由来になります。
ちなみに、αピネンは化学反応によって、βピネン、β-フェランドレン、ジペンテンといったテルペン系の原料と結合させたポリマー(重合体)化させた化粧品原料はあります。
「ポリテルペン」という名称で、物理的に剥がす粘着性の脱毛剤原料として米国パーソナルケア製品協議会に登録されています。
ネットで使用実績を軽く調べてみましたが、「ポリテルペン」は国内の化粧品にあまり使われていないみたいです(2019年2月時点)。
(参考文献 1,2)
α-ピネンの性質と安全性についてのまとめ
化学的性質と安全性について表にまとめています。
★αピネンの特徴
名称 | α-ピネン |
IUPAC名 (化合物の体系名) |
(1S,5S)-2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]-2-ヘプテン |
別名 | 2-ピネン |
英語名 | α-pinene |
分子式 | C10H16 |
化学的分類 | モノテルペン炭化水素類 (参考文献 3) 二環式モノテルペノイドアルケン(参考文献 4) |
芳香 | 爽やかな針葉樹の香り |
期待される効果・作用 | 経皮吸収促進作用、抗菌作用作用、昆虫誘引作用、抗真菌(カビ)作用、抗腫瘍作用など (参考文献 4 ビジュアルガイド精油の化学参照)
【科学的なエビデンス】
2018年Zhao らの研究によると、ヒト前立腺がんを移植したヌードマウスにαピネンを投与したところ、がん細胞の増殖を抑制した研究論文があります。 しかもがん細胞自ら細胞死を引き起こすアポトーシスによって抑制されたことが報じられています(参考文献 6 , Zhao et al 2018)。
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構造式 |
α-ピネン さらに細かく分類すると、αピネンは三次元的は立体配置が異なる2パターンの構造があります((1R)-d-α-ピネンと(1S)-l(エル)-α-ピネン)。 |
安全性・毒性 | 【皮膚刺激性及び、アレルギーを引き起こす感作性について】
5〜10%程度のαピネンにおいては皮膚刺激性及びアレルギー反応性は低いものとされています。 1987年のSantucciなどの報告によると、パッチテストを受けた1,200人の皮膚炎患者のうち、濃度5%のαピネンに対しては刺激性及びアレルギー反応はなかったと伝えています。 また、発がん性に関してもかなりリスクが低いものになります。 ただし、成分が自動酸化してしまうと、アレルギーを引き起こすペルオキシドが形成されてしまうリスクがでてきます。 含有量が高いものについては、密封容器で冷暗所に保管をし、できれば酸化を防ぐための酸化防止剤と組み合わせるのがよいそうです(参考文献 4 ,精油の安全性ガイド 第2版)。 |
その他 | αピネンは400種類の精油に含まれているほど、植物界ではありふれた成分になります。
比較的蒸発しやすい性質のため、他の香料を拡散させる効果があります。 森林の香りが遠くからでも分かるのは、この成分が他の成分の引き立て役として働いているのではないかと言われています。 |
(表全体の参考文献 2,3,4,5,6)
★α-テルペンを含む植物精油についての過去記事
・ローズマリー(α-ピネン)タイプ
・レモンセッドタイプではありませんが、ティーツリーについて
参考文献
*1) 日本化粧品工業連合会 編集 (2013年) 日本化粧品成分表示名称事典、付録5、p616-p751
*3)ウィキペデイア ピネン<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%8D%E3%83%B3>(2018.02.21アクセス)
*4) 長島 司(2012)ビジュアルガイド精油の化学,61
*5)和田 文緒 (2008) アロマテラピーの教科書―いちばん詳しくて、わかりやすい!
*6)Zhao Y1, Chen R, Wang Y, Yang Y. (2018) α-Pinene Inhibits Human Prostate Cancer Growth in a Mouse Xenograft Model. Chemotherapy. 2018;63(1):1-7.
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