精油・エッセンシャルオイルに含まれている1,8-シネオールとは、どういう芳香成分?
ユーカリやラベンダー、ティーツリー、ローズマリーといった植物の精油に含まれている芳香成分で、オキサイド類に分類されているものになります。
ユーカリ特有のちょっと爽やかでスッキリする香りが特徴です。
どういったものか見ていきましょう!
化粧品成分の表示と配合目的について
精油に含まれたものを使用するだけではなく、1,8-シネオール成分単体だけも化粧品原料として配合されています。
化粧品成分の表示と配合用途については次のようになります。
★ 化粧品成分における用途別の表示
1.8-シネオールは、化粧品では「ユーカリプトール」という名称に変わります。
用途 | 表示名 |
化粧品の成分表示 | ユーカリプトール |
医薬部外品(薬用化粧品)の成分表示 | 1,8-シネオール |
NCI名(化粧品成分の国際名称、英語表記) | Eucalyptol |
★化粧品の用途
成分の分類 | 香料成分 |
化粧品での配合目的・用途 (米国パーソナルケア製品協議会で名称登録時の用途) |
変性剤、香料、口腔衛生剤 |
(参考文献:1)
1,8-シネオールの性質と安全性について
化学的性質と安全性について表にまとめています。
★1,8-シネオールの特徴
名称 | 1,8-シネオール |
IUPAC名 (化合物の体系名) |
1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン |
英語名 | 1,8-cineol |
別名 | シネオール ユーカリプトール カユプトール 1,8-エポキシ-p-メンタン |
分子式 | C10H18O |
化学的分類 | オキサイド類 二環式モノテルペノイドエーテル |
芳香 | 爽やかですっきりとしたユーカリ(カンファーのような)の香り |
期待される効果・作用 | 抗真菌作用、呼吸器疾患の改善(鎮咳作用・去痰作用)、抗菌作用、抗炎症作用、防腐効果、免疫増強作用、経皮吸収促進効果、殺虫効果、陳系効果(筋肉の痙攣を抑える)、生理痛の緩和、殺虫作用(ハエ)など
(参考文献2 )
【科学的なエビデンスについて】 ・抗炎症作用について 1,8-シネオールは、炎症因子のプロスタグランジンとサイトカインを抑制することが報告されています(1998年 Santos らの報告 参考文献 5より)。 ・鎮咳・去痰作用 クエン酸で誘発したヒトの咳で1,8-シネオールを多く含むユーカリ精油を吸引したところ3時間で発作が収まったという報告(2004年 Moris らの報告 参考文献 5より)や、消化管のムチンの分泌を増やし、気管の繊毛運動を更新させて去痰を促進したという報告もあります(1992年 Penoel らの報告 参考文献 5より)。
・皮膚刺激の軽減・清涼感の向上 2012年マンダムの神経にある化学物質を感じるセンサータンパク質(TRPチャンネル)において、1,8-シネオールはペパーミントに含まれているL-メントールのヒリヒリする皮膚刺激を軽減し、清涼感を向上させる機能があることが報告されました(参考文献 6)。 ところが、1,8-シネオールはカンファーの香りが強く、製品化しにくいということから更によい別の成分(イソボルニルオキシエタノール)が開発・発見されています(参考文献 7)。
|
構造 | |
安全性・毒性 | 1,8-シネオールは皮膚刺激性及びアレルギーを引き起こす感作性両方ともリスクが低いものされています。
また、げっ歯類において、発がんを引き起こすような変異原性(遺伝子が変異すること)をしめすデータはありませんでした。 ただし、子どもにおける直接吸引による神経毒性には注意が必要な場合があります。 4歳までの小児の鼻に1,8-シネオールを滴下注入すると、毒性によって呼吸を妨げる可能性があることが示唆されています(参考文献3 精油の安全性ガイド 第2版参照)。 |
その他 | 1,8-シネオールはは200種類の精油に含まれているほど、比較的ありふれた成分になります。
精油自体はほとん問題はありませんが、1,8-シネオール成分単体の場合において消防法の危険物第4類 第2石油類に該当し、引火の可能性があります。そのため、保管・管理に注意が必要です(参考文献 4)。 |
(参考文献 2,3,4,5,6)
1,8-シネオールの含有量が多い植物とはどういう物があるの?
化粧品成分の名称の「ユーカリプトール」というようにのユーカリ属が特に多く含んでいます。
200種類以上の精油成分に含まれていますが、ローズマリー、セージ、ラベンダー、ティートゥリーといった植物に比較的多く含まれています。
(参考文献 4, 精油の安全性ガイド 第2版(2018年)参照)
含有精油名称 | 含有量 (%) |
ユーカリ(ポリブラクテア) | 88.7-91.9 |
ユーカリ(グロブロス) | 65.4-83.9 |
カユプテ | 41.1-70.8 |
セージ(ホワイト) | 68.4 |
ユーカリ(ラジアータ) | 60.4-64.5 |
カルダモン(ブラッグ) | 61.3 |
マジョラム(スパニッシュ) | 45.1-58.6 |
ローズマリー(シネオールCT) | 39.0-57.7 |
ラベンダー(スパイク) | 28.0-34.9 |
ローズマリー(α-ピネンCT) | 15.0-25.1 |
ローズマリー(カンファーCT) | 17.0-22.5 |
ティーツリー | tr.(微量)-15.0 |
ラベンダー(スパニッシュ) | 3.6-14.5 |
★1,8シネオールを多く含む精油の記事はこちら
参考文献
*1) 日本化粧品工業連合会 編集 (2013年) 日本化粧品成分表示名称事典、付録5、p616-p751
*2)ウィキペディア シネオール <https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB>(2019年2月20日アクセス)
*3)サイエンスの目で見る―ハーブウォーターの世界(2009)
*6)マンダム プレスリリース (2018)「マンダム、ユーカリ由来成分ユーカリプトールに 清涼感の不快刺激低減効果を発見 ~より快適な清涼感の実現に向けて~」< https://www.mandom.co.jp/release/2012/src/2012030801.pdf>
*7) マンダム プレスリリース (2018) 「清涼成分によって生じる不快刺激に対する低減効果を臭気強度の低い成分「イソボルニルオキシエタノール」に発見
~より快適な清涼感の実現に向け、TRPチャネル研究を応用~」 <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000394.000006496.html >
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