シャンプーをやめると毛が生えてくる?
”シャンプーをやめると毛が増える”というタイトルで、何もつけない美容法や湯シャンを推奨しているクリニック宇津木流の宇津木院長の著書があります。
・髪のお湯洗い方法とは
湯シャン(お湯洗い)をすると結果的には、薄毛を予防し、髪の毛が増えてくるということを宇津木院長自身や他の方の体験、考え方等を交えて書かれている書籍になります(※1参照図書 シャンプーをやめると、髪が増える)。
賛否両論がありますが、薄毛解消に関わっている部分を抜粋し、内容についてみていきます!
湯シャンをすると薄毛解消になる4つの理由とは(宇津木院長著書参照)。
宇津木院長の著書から湯シャンで薄毛解消になる部分を抜粋し、まとめてみました。
1.皮脂腺が退縮し、髪に栄養が行き渡りやすくなる
シャンプーをすると皮脂が奪われてしまうため、皮脂分泌量を増やさなければならなくなる。
そうすると、皮脂腺が発達・肥大化してしまう。
湯シャンに切り替えると、皮脂を過剰に分泌する必要がなくなるので、髪の毛が作られる部分に栄養が行き渡りやすくなり、毛も太くなっていく。
2. 毛包幹細胞が活発になる
毛包幹細胞とは、毛を作る毛母になったり、あるいは色素を作る細胞になったりとあらゆる細胞の元になる細胞であるとともに、毛母に働きかけて毛を作る信号を送ったりと、新しい毛が作られる上で無くてはならない細胞になります。
シャンプーの使用を止めると、細胞毒性によって毛包幹細胞の働きが低下していたものが活性化されて、髪の毛がつくりやすくなる。
3.頭皮が厚くなり、毛が深い部分でつくられるようになる
シャンプーをすると表皮のバリア機能を低下させてしまい、頭皮の乾燥が起こり、細胞分裂を止めてしまう。
そうすると頭皮自体た薄くなり、毛が深い部分で作られなくなってしまい、薄毛化が起きる。
シャンプーをやめれば、バリア機能が復活して、頭皮が厚くなり、毛が深い部分でつくられるようになる。
4.常在菌が増え、頭皮が健康に
シャンプーを使えば、含まれている抗菌剤(例えばパラベン)によって、常在菌が死滅し、普通なら侵入できないマラセチアを始めとした病原性の雑菌が増えて皮膚炎が起きたり、フケがひどくなり、髪の毛の成長を妨げることに。
(マラセチアは皮膚常在菌として存在するんですけどね…)
シャンプーをやめれば常在菌が増えるので、雑菌の繁殖が抑制され、健康な髪がつくられやすくなる。
記載されてある内容は、本当のところどうなのでしょうか?
全体的には、湯シャンをするとシャンプーでのダメージが減り、頭皮環境には良くなるような気がします…
ところが、他の方の文献などを参照に考えてみると、体質によっては逆に湯シャンをすると悪化することもありますし、界面活性剤を悪者として扱っていますが、間違った使い方をしない限り、それ程悪役でもありません。
では、それぞれの項目についての信憑性とともに、湯シャンで薄毛が解消するかみていきます。
湯シャンをすると薄毛解消になる?湯シャンのメカニズムの信憑性とは。
宇津木院長の著書に記載されてある内容について詳しく見ていきます。
1.皮脂腺が退縮し、髪に栄養が行き渡りやすくなる
シャンプーを使用するとどうやってもある程度の皮脂は落ちてしまうのは仕方がありません。
特にラウリル硫酸ナトリウムなどの脱脂力や洗浄力が強いアニオン系シャンプーを使い続けると皮脂分泌量が増えてしまいやすく、皮脂腺が発達・肥大化する恐れがあります(シャンプーの界面活性剤の配合は、基本的には一種類ではなく何種類か配合されていて皮膚ダメージは軽減されるような工夫がありますが、ラウリル硫酸ナトリウムなど〇〇硫酸と書かれているものは脱脂力、洗浄力が強く皮膚刺激が他のものと比べ強い傾向はあります)。
皮脂腺が発達した場合、髪の毛を作る組織に栄養が行かないばかりではなく、男性型脱毛症(AGA)になりやすい傾向のある方の場合、皮脂分泌が多くなってしまうと、男性型脱毛症に関与する”5αリダクターゼ”という男性ホルモンをジヒドロテストステロン(DHT)に変える酵素の分泌量もそれに伴って増えやすくなります。
このDHTは、毛包(髪の毛の組織)の毛乳頭内のホルモン受容体にくっついて毛包組織の成長を妨げる遺伝子の発現が起こし、髪の毛をどんどん細くさせていきます(個人によって組織のホルモン感受性は変わります)。
薄毛予防のために皮脂を取りすぎない湯シャンを取り入れ、皮脂腺の発達を抑えるのはまんざら悪くはなさそうです。
ただ、これにも問題があります。
いきなり湯シャンに切り替えてた場合、シャンプーによって皮脂コントロールの均衡が保たれていたものが崩れ、頭皮の皮脂量が過多になり、逆にかゆみや炎症等が起きやすくなってしまいます。
比較的、頭皮の皮脂分泌量が多い方については、洗浄力が緩めの界面活性剤(例えばアミノ酸系等)が入ったシャンプーで洗いつつ、少しずつ湯シャンを取り入れてもいいかもしれません。
(洗浄力が弱めのシャンプーを使った段階でも頭皮がスッキリしない場合は、肌に残りにくい弱酸性の”酸性石けんのシャンプー”をおすすめします。)
★頭皮クレンジング剤 すっぴん地肌
非イオン界面活性剤の界面活性剤配合ですが、洗浄力がマイルドな成分でできており、湯シャン用トレーニングに活用できそうです。
・すっぴん地肌の参照記事
・酸性石けんとは
2. 毛包幹細胞が活発になる
シャンプー細胞毒性によって毛包幹細胞の働きが低下していたものが活性化されて、髪の毛がつくりやすくなると、著書には記載されていましたが….
シャンプーの成分が毛穴に入ることはある可能性がありますが、基本的に水以外でシャンプーの大半を占める界面活性剤は、比較的皮膚に浸透し易いとはいえ、通常の条件ではあまり入りません。
シャンプーをやめると毛包幹細胞が活発になるのは…信憑性が低いです。
・界面活性剤がどれくらい皮膚に浸透するか書いています。
3.頭皮が厚くなり、毛が深い部分でつくられるようになる
こちらについては、信憑性が低いです。
ですが、シャンプーの種類ややり方によっては、表皮のバリア機能低下を招いてしまうことがあります。
(シャンプーのやり方については、前回のハゲないシャンーの使い方に記載しています。)
バリア機能低下によって、何らか皮膚刺激を受けたり、ストレスを抱えてしまうとむしろ新しい細胞を周期的に作り出してしまうことが知られています。
とくに皮膚を周期的につくる”ターンオーバー”が極端に短くなる”乾癬”という病気がありますが、この病気になった場合、フケが大量に出てしまうなど、皮膚の上皮部分の角質がどんどんつくられてしまいます。
乾癬に比べると症状は軽いものかもしれませんが、シャンプーでのバリア機能の低下も同様に”フケ”がでやすくなります。
このような状態では、細胞分裂が低下するよりもむしろ活発になっています。
バリア機能低下によって頭皮の厚さが減り、毛根が十分成長しなくなるとありましたが、表皮の下にある真皮層と比較したらターンオーバーをしている表皮の厚さは1/10程度しかなく、表皮の厚さが変わったとしても全体的な頭皮の厚さは変化しにくいかと考えられます。
これらの理由から、シャンプーをすると頭皮の厚さが変わって毛が生えにくくなるというのは…少し疑問がのこります。
皮膚の厚さに関して話を戻しますが、ステロイド外用薬を長期に渡って使用した場合、皮膚上部の表皮全体が萎縮してしまい、薄くなる副作用があります。
この”皮膚が薄くなる現象”との因果関係を調べることができませんでしたが、いくつかのステロイド外用薬やステロイド剤(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン)においては、副作用で脱毛が起きることが報告されています(文献:誰もが知りたい毛髪のひみつ―毛髪の科学と診断 八木原陽一著)。
4.常在菌が増え、頭皮が健康に
部分的にあっています。
シャンプーの場合において抗菌剤入りのものではない限り、もともとの防腐剤の含量は少ないため、シャンプーをしている間に洗い流されてほとんど影響はなくなります。
しかしながら、シャンプーに含まれる界面活性剤によって、皮膚常在菌のバランスが悪くなってしまう可能性があります。
湯シャンを行うと、常在菌のバランスを崩す外的要因が減るため、微生物環境が維持はしやすくなります。
そういう意味では、湯シャンは頭皮環境維持に役立つのではないでしょうか。
まとめ
宇津木院長の著書においては、いくつか疑問がある箇所はありましたが、湯シャンでの薄毛対策はやり方を間違わなければ、ある程度効果はありそうです。
(湯シャンをすると、頭皮の皮脂のコントロールをしたり、頭皮環境を整える効果が期待されます。)
ただし、湯シャンをしてみて、髪の毛のベタつきがひどくなったり、かゆみがひどくなる場合は要注意です。
そういう場合には無理をせずにシャンプーを使って、余分な皮脂や垢を落として下さい。
非接触皮膚科学を参照にすると、界面活性剤を含んだシャンプーは一切使わない方がいいと記載はされていますが、逆に悪化する場合もあります。
なれない場合はムリに湯シャンをせずに、頭皮の様子をみて時々取り入れてみてもいいかもしれません。
・非接触皮膚科学とは何?
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