ココイルグリシンK(ヤシ油脂肪酸グリシンK)とはどんなもの?
「ココイルグリシンK」は、アミノ酸系の洗浄剤の成分になります。
シャンプーを選ぶとき、肌にマイルドな「アミノ酸系」の洗浄剤成分のものがなんとなく良さそうなイメージがあるので、つい買ってしまうということもあるのではないでしょうか?
じつは、アミノ酸系といってもアミノ酸の種類によって洗浄力や性質が変わってきます。
ココイルグリシンKはどんな性質があるのか、見ていきましょう!
★ 使用用途別の表示
化粧品の表示と薬用商品(医薬部外品)の名称が変わってきます。
ちなみに、「ココイルグリシンK」の「K」とは、「カリウム」の略(元素表示)になります。
用途 | 表示名 |
化粧品の成分表示 | ココイルグリシンK |
医薬部外品原料規格表示(薬用商品)の名称 | N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム |
INCI名(国際表記、英文) | Potassium Cocoyl Glycinate |
★ココイルグリシンKの成分の特徴まとめ
成分の分類 | 界面活性剤(アニオン, 陰イオン) |
作用・効果 |
洗浄剤 |
洗浄力 *1 参考文献) |
〜★★★★☆☆ (アルカリ性の条件だと、洗浄作用が強くなってしまう) |
構造 (*2 参考文献) |
|
成分の作用・特徴とは?
アミノ酸系の洗浄剤で、アニオン(陰イオン)界面活性剤になります。
天然のヤシから採取された「ヤシ油脂肪酸」とヒトの肌に含まれているコラーゲンの成分のアミノ酸である「グリシン」でつくられた合成界面活性剤です。
反応物には、石けんのように脂肪酸に塩(カリウム塩)がついた状態になっているので、「アミノ酸石けん」に分類されます。
主に洗浄剤としての用途で使われていて、クリーミーでかなり泡立ちがよく、さっぱりとした洗い上がりになるのが特徴です。
洗い上がりの性質は、石けんとよく似た構造になっていることに由来します。
原料のグリシンはアミノ酸の中でも一番小さくて、出来上がったコイルグリシンKが「アミノ酸」の性質よりも「石けん」の性質が強くでてしまっているからです。
石けんとココイルグリシンの構造の比較(*2 参考文献)
※図のRは、ヤシ油脂肪酸の脂肪酸の種類で変わります。ヤシ油脂肪酸は天然原料なので、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸..といったものが混在しています。
しかも石けんと同じ様にココイルグリシンKも弱アルカリ性です。
そういう事もあって、アミノ酸由来ではあるものの洗浄力は強くなりがちです。
石けんとは違うココイルグリシンKの性質
アミノ酸のグリシンの性質が働いて、石けんよりも「つっぱり感」が少ないのが特徴です。
さらに、石けんと組み合わせると「泡立ち」や「泡のコシ」が増大する性質もあります。
これらの性質を利用して、「つっぱり感」を抑えた石けんベースの洗顔料で活用されています。
通常は、お肌が乾燥しがちになるのでBGやグリセリンといった水溶性の保湿剤やセラミドのなどの保湿剤も同時に配合されています。
とはいうものの、オイリー肌向けで、肌が乾燥しがちな人の場合はなるべく石けん+ココイルグリシンKとの組み合わせの商品は避けたいところですね。
ココイルグリシンKは、シャンプーにも配合されています。アルカリ性のままだと髪の毛のきしみを引き起こしてしまうので、pHを調節したり、トリートメント作用のあるものを配合して欠点をカバーしています。
石けんはpH8ぐらいにならないと泡立ちが弱まってしまいますが、ココイルグリシンKは、pH7でも石けん並に泡立たせることができます。
中性付近になれば、洗浄力やお肌や髪の毛への刺激は一層低下し、マイルドな洗い心地になります。
また、アルカリ性の泡立ちよりは少し劣りますが、別の「アミノ酸石けん」と組み合わせて、石けんのようにさっぱり洗える割には、しっとり感や潤いが持続するタイプの洗顔料やシャンプーも販売されています。
しかも、石けんよりも角質層のアミノ酸やPCAといったNMFと呼ばれる天然の保湿成分の流出も少ないということも実験データで確認されています(*5 2012年文献)。
石けんの刺激が苦手だけれどもさっぱりした洗い心地が好きな場合であれば、ココイルグリシンKメインの洗顔料を活用してもいいかもしれませんね。
(*1,2,3,4,5 参考文献)
用途
シャンプー、ボディーソープ、石けん、洗顔料などの洗浄剤で使われています。
(*1,2,3 参考文献)
配合されている製品
★洗顔フォーム
安全性について
皮膚や目の刺激が少なく、安全性は高いものとされています。
アレルギー性の情報ですが、入手出来ず不明です。
安全情報については、分かり次第更新します!
皮膚一次刺激について
ココイルグリシンK及び、ラウリン酸(SL)、ラウリル硫酸(SLS)をウサギ4羽を毛刈部に24時、5wt% 0.3mlパッチテストを行ったところ、ココイルグリシンKは、SLとSLSを比較して低刺激であることが報告されています(1996年 参考文献 *4) 。
目粘膜の一次刺激について
ココイルグリシンK及び、ラウリン酸(SL)、ラウリル硫酸(SLS)5wt%の0.1 m lをウサギに点眼し24時間後に同様に判定したしたころ、ココイルグリシンKは、SLとSLSを比較して低刺激であることが報告されています(1996年 参考文献 *4) 。
さらに、アレルギー性(感作性)もかなり低いとはされています。
ただし、弱アルカリ性の性質になっていた場合だと、アミノ酸系の割には洗浄力が強く出ることがあります。
職業的に頻繁にシャンプーなどの界面活性剤を使っていたり、アレルギー体質であると刺激物になることもあるので、成分が配合されているものを使う場合は様子を見て使ってくださいね。
(参考文献 *4)
参考文献
1 . かずのすけ(2018) どんな敏感肌でも美肌になれる! オフスキンケア
2.塩尻栄二, 佐野啓吾, 小山匡子, 伊能正浩, 服部達也, 吉原秀樹, 岩崎敬治, 川崎由明, 味の素株式会社 中央研究所(1996)アシルグリシンの特性とその応用-新規アミノ酸系界面活性剤-J. Soc. Cosmet. Chem. Japan. Vol. 30, No. 4
3. 味の素ホームページ アミライト より<http://www.ahs.ajinomoto.com/products/cosme/cosme_1.html>(2018年12月31日アクセス)
4.岩瀬コスファ 化粧品原料データベースアミライト®GCK-12K
<http://iwasedatabase.jp/presc_detail.php?id=PS01808&t=1283902327>(2018年12月31日)
5.押村英子人と地球に優しく洗う(2012)J. Soc. Cosmet. Chem. Japan. Vol. 46, No. 3