化粧品成分のPCA-Naとはどんな特徴があるの?

PCA-Na 化粧品 化粧水 イメージ図

 

PCA-Naは、ヒトの角質層にも含まれている大切な保湿成分です。

 

「お肌に含まれている成分で安全性が高い!」ということから化粧水、乳液、美容液といったスキンケア商品で使われています。

「天然の保湿因子配合」って書いてある商品には必ずといっていいほどお見かけします。

 

髪の毛にも作用するので、シャンプーといったヘアケア商品にも配合したものがあります。

PCA-Naとは、一体どういったものか見ていきましょう!

 

★ PCA-Naの使用用途別の表示

用途 表示名
化粧品の成分表示 PCA-Na
医薬部外品(薬用化粧品)の成分表示 DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液
INCI名(国際名称、英語表記) Sodium PCA

★PCA-Naの成分の特徴まとめ

成分の分類

保湿剤

作用・効果・用途

水性保湿剤(保湿作用、柔軟作用)

構造 

PCA-Na(DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム)の構造式

化粧品成分を製造するときの由来原料

アミノ酸の一種のグルタミン酸

 

PCA-Naの由来・性質

そもそもPCA-Naとはどんなもの?

PCA-Naは、表皮の角質層にある天然保湿因子(NMF)の12%を占める主要なアミノ酸由来の保湿成分です。

 

ヒトのような動物の皮膚の他に、大豆や糖蜜といった食用の植物にもある自然界にありふれたものです。

 

天然保湿因子に含まれるPCA-Naの場所を説明した皮膚の図

 

自然界にはどこにでもあるような成分にも関わらず、皮膚の場合だとPCA-Naは皮膚の最上部の角質層にほとんど存在します。

ところが、発端の生体内の原料は、角質層より皮膚内部の顆粒層の成分です。

 

皮膚の顆粒層とよばれる部分に含まれている「ケラトヒアリン顆粒」の「プロフィラグリン」という不溶性のタンパク質がその原料。

「プロフィラグリン」は、皮膚のターンオーバーを経ていくうちに「フィラグリン」という水溶性のタンパク質に酵素の作用で変わっていきます。

フィラグリンは、角質層に到達すると線維状タンパク質の「ケラチン」と結合して、繊維同士を束ねて細胞内をより強固にして皮膚を保護します。

ところが、ターンオーバーが進んで角質層の最上部に近づくと、酵素の作用によってケラチンと引き離され、アミノ酸の状態まで分解されます。

 

その中で豊富にあるのが「グルタミン酸」とよばれる旨味成分にもなっているアミノ酸。

これが、酵素(ブレオマイシン水解酵素)によって「PCA(ピロリドンカルボン酸)」になります。

 

ピロリドン酸は吸水性はありませんが、ナトリウムイオンが結合した「PCA-Na(ピロリドンカルボン酸ナトリウム)」という「(ナトリウム)塩」の状態になって水分を吸着します。

 

その効果は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールといった化粧品成分で代表的な保湿成分よりも優れてイルことが知られています。

 

皮膚にある保湿成分も元々は別の機能があったりと、生き物って、うまくムダがないようにうまく作られているものですね。

 

(*1,2,3,4 参考文献)

化粧品原料として使われている

一般的には「グルタミン酸」を化学処理して合成して作られています。

主には、先程の酵素処理の他にも、アルカリ高圧処理などといった手法で作られます。

白色で結晶化していますが、化粧品原料としては、50%の水溶液として流通しています。

(*5 参考文献)

PCA-Naの化粧品での作用について

肌の表面につけても角質層に強力に浸透する優れた成分です。お肌の乾燥を保護する化粧水や乳液、美容液に使われているのはその理由からです。

髪の毛についても、保湿効果が高いので、髪の毛をしっとり、柔らかくしてまとまりを良くするコンディショニング成分としてヘアケア商品にも配合されるようになってきました。

しかも乾燥しがちな頭皮の保湿にも一役買います。

また、シャンプーの界面活性剤や他の保湿成分との配合によっては、肌や髪の毛の保湿や保護効果が高まることが知られています。

 

 

(*1  参考文献)

 

PCA-Naの安全性について

元々肌の成分であったこともあって、肌への刺激性も低く、安全性高い成分になります。

 

参考文献

1)鈴木一成監修, 化粧品成分用語辞典(2012)  P127

2)宇山 光男,久光 一誠,岡部 美代治(2015)化粧品成分ガイド 第6版 p46

3) 日本化粧品技術者会 化粧品用語集 ライブラリー ケラトヒアリン顆粒より

<https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/519>(2019年1月15日アクセス)

4)日比野利彦(2013)天然保湿因子(NMF)産生酵素の性質とバリア機能 J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn, 47(3), P216-220

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/47/3/47_216/_pdf

5) 伊藤美佳,高橋 里次,野口泰信,弓岡良輔,小川智加, 味の素株式会社 ピロリドンカルボン酸またはその塩の製造方法 2011年公開特許,WO2011102395