皮膚の常在菌のバランスはが崩れることがあります。

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前回の石けんを使い続けたら肌に悪い?使い続けたら良くない理由にて

人の皮膚表面に様々な微生物(常在菌)が住み着くことによって、悪影響をもたらす菌や物質から保護されていることをお伝えしました。

この常在菌による皮膚バリアは、
界面活性剤を長期間、念入りに使うことによって、
数が減少し、バランスが崩れる恐れがあります。

では、悪影響をもたらす菌や物質からの保護とはどういうものでしょうか。
また、皮膚の常在菌のバランスが崩れたらどうなるのでしょうか。

常在菌はバランスを保ち、皮膚を酸性に保って保護しています。

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皮膚には一兆個以上の微生物が住みついて、皮脂膜とともに肌の健康を保っています。

皮膚で肌の健康を保つ微生物を”皮膚常在菌”といいます。

そして、常在菌がリパーゼという脂質を分解する酵素を吐き出して汗や皮脂を代謝し、グリセリン脂肪酸を作り出します。

皮膚常在菌は、アクネ菌類やブドウ球菌類になります。

(アクネ菌はニキビの原因として悪者のイメージがありますが、実は皮膚を保つためには必要な菌になります)

ちなみに皮脂から分解される脂肪酸成分は、

  • パルミチン酸
  • パルミトレイン酸
  • オレイン酸
  • ステアリン酸

になります。

そして、さらにこれらの脂肪酸はアクネ菌類達によって、プロピオン酸や酢酸などの有機酸を作り出します。

常在菌によってつくられたグリセリンは皮膚に潤いを与えます。そして、有機酸は弱酸性(pH5付近)に保ち、有害微生物(例えば肌をアルカリ性にしてかゆみを与える黄色ブドウ球菌等)の繁殖を抑えて皮膚を健康に保っています(*1、*2)。

さらには、角質層の潤いを与えるセラミドも作り出し皮膚のバリア機能を増強させます。

 

また、常在菌同士はお互いに分解物を有効活用し、共存関係の間柄でバランスを保っています(*3)。

 

ところが、上記の脂肪酸は必要な成分ですが、ありすぎても皮膚の刺激物質(かゆみの成分)になるようで、微生物が適度にコントロールしています。

肌には必須なオレイン酸、ステアリン酸自体も、皮膚の刺激物質として報告されています。

・オレイン酸(C18:1)
→刺激物質となる。

・ステアリン酸(C18)
→皮膚の刺激物質となる。動物実験では、発がん性もあり。

参考文献 *3 *4より

脂肪酸の分解が微生物によってうまく行われず、脂肪酸過多の状態になってしまうと皮膚にかゆみを与えるとともに脂漏性皮膚炎や脂漏性湿疹のリスクが高まっていきます。

また、微生物のバランスが崩れて、脂肪酸をよく作り出す菌(malassezia furfur等)が過剰増殖した際も、皮膚疾患になりやすくなります*3) 。

表皮のブドウ球菌は、最近”美肌菌”として着目されています。

アクネ菌やmalassezia furfur類は皮膚の常在菌として通常は問題ないのですが、増えすぎると上記のような疾患を発生してしまいます。

ところが、表皮のブドウ球菌は増えすぎても疾患などにつながる悪影響が無いため、特にいい善玉菌(美肌菌)として着目されています。

そのため、美肌菌を減らさないため(増やす)にはどうしたらいいのでしょうか?

美肌菌自体は肌バランスの状態がいい場合、適度に肌の皮脂で増殖していきます。

しかしながら、比較的キツイ界面活性剤を使って何度も洗い流すと美肌菌が減少する原因となりますし、防腐剤が入った化粧品が肌に付着したままになっていた場合も菌を減少させます。

美肌菌を増やすためには、朝はぬるま湯だけなど化粧品に頼りすぎないケアが必要なのかもしれません。

余談ですが、化粧品をあまり使わない方法で、石けんを使う方法が推奨されていることがあります(宇津木式など)。

石けんは、微生物に分解されやすい界面活性剤になり、原料となっている”脂肪酸”は上記に含まれているものがよく使われています。

ステアリン酸(牛脂由来の石けん、一般的によく市販されている石けんの主要な成分)

オレイン酸(オリーブオイル由来の石けん、以前話題になったアレッポの石けんの成分)

 

石けんの場合、原料が上記のような天然由来の脂肪酸ことから、比較的微生物に分解されやすく比較的細菌類に影響が少ないイメージがあります。

ところが、ある程度、微生物によって分解されますが、石けんの未反応の脂肪酸が皮膚に付着し、刺激物質の原因となる可能性が…

また、石けんの界面活性自体は皮膚表面にくっつきにくいと考えられていますが、肌が弱っている方にはアルカリ性の比較的キツイ陰イオンでダメージを受けてしまいます。

アトピーを悪化させる黄色ブドウ球菌を減らすために石けんを使う方法が推奨されていることがありますが、同時に善玉の表皮ブドウ球菌も減ってしまいます。

繰り返しになりますが、健康な肌を保つためには皮膚常在菌のバランスが大切だと考えると、肌に影響のある化粧品を避けたほうがいいのではないでしょうか。

参考文献

*1)「何もつけない」美肌術 牛田 専一郎 主婦と生活社 P22-P23

2*) 生きる力自然から学ぶ健康法 : 香りの多様な働き・作用で美と健康をサポートする

*3 )神奈川県環境科学センター化学物質安全情報提供システム
「ステアリン酸」「オレイン酸」
http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp/kisnet/code.asp?code=57-11-4
http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp/kisnet/code.asp?code=112-80-1

⇒2017年12月26日にシステムが終了し、リンク切れになっています。

(2016-06-03参照)

*4) 非接触皮膚科学 (2010)「第233号 14以上は?『脂肪酸と菌』の秘密」
http://hisesshoku-derm.com/archives/2010/04/23314.php
(2016-06-03参照)