石けんにも種類があります
前回の記事石けんのすすめ10にて
石けんにも種類があることをお伝えいたしました。
石けんは油脂(分解したものは脂肪酸)と水酸化ナトリウム(固形石けんの場合)
を反応させて作ります。
けん化法、中和法、窯焚き法等 製法はいろいろありますが、
固形石けんが作られる際は、基本的には水酸化ナトリウムが使われます。
その一方、石けんに使用する”油脂”(油脂が分解されたものは脂肪酸)は、
動植物性由来の様々な油脂原料が使われています。
使われる油脂原料の脂肪酸の組成によって、泡立ちやすかったり、水に溶けやすくなったり、
性質が変わってきます。
使いやすさを向上するために
昔からよくある石けんは単一の油脂だけで作られているのではなく、
いろいろな油脂原料を混ぜて作られているようです。
例:化粧石けん(牛脂をベースにヤシ油を平均20%の割合)
混合することで、泡立ち良く、適度な温水に溶けて、適度な硬さになります(*1)。
※ 前回まで、”油脂”のことを”脂肪”と記載していました。
”脂肪”とは、常温で固体になっているものを指すそうです。
常温でも個体にならない植物性の油脂(”脂肪油”というそうです)も
石けんの材料として使われています。
そのため、今回から”油脂”と表記しました(*2)
脂肪酸を変えることによって
石けんの性能が変わることがわかりましたが、
では、実際の肌にはどうでしょうか。
石けんの脂肪酸の種類によって肌への影響が変わります
石けんに使われている油脂の種類によって、
肌にある皮脂や角質層の保湿成分の溶出が変わってくるようです。
皮脂と角質内部の保湿成分は、
①皮脂(皮脂線から分泌される)
スクワレン(10%)、トリグリセリド(25%)、モノ・ジグリセリド(10%)、
ワックス (25%)、脂肪酸(25%) 等
②天然保湿因子(NMF)
アミノ酸類 (40%)、ピロリドンカルボン酸 (12%)、尿酸 (7%)、Na,Ka等ミネラル分 (8%)、
糖,有機酸,ペプチドなどの有機成分 (8.5%) 、乳酸塩 (12%) 等
③角質細胞間脂質
脂肪酸 (20%)、コレステリルエステル (10%)、コレステロール (15%)、セラミド (50%) 等
になります (*3)。
石けんの話に戻りますが、
皮脂分泌が活発な普通の肌(または、脂っぽいと感じられる方)は、
牛脂やパーム油主体の石けん(いわゆる昔ながらの石けん)が良いそうです。
牛脂やパーム油中には、ステアリン酸やパルミチン酸と呼ばれる有機酸が豊富です。
この有機酸から作られる石けんは、皮脂の主成分である”スクワレン”を洗い流す反面、
角質層の細胞間脂質成分であるコレステロールを溶出させにくい特徴があります。
コレステロールは角質層のすきまを埋める成分なので、天然保湿成分は保持されます。
そのため、最初は皮脂が取れてさっぱりしますが、時間が経てば元に戻ります。
ただし皮脂が少ない方は皮脂が取られすぎるので、こちらの石けんは控えた方が良いかもしれません(*4)。
皮脂が少なめの方は、オリーブ油や米ぬか油から作られる石けんが良いそうです。
この石けんには、オレイン酸と呼ばれる有機酸が豊富です。
オレイン酸石けんは、皮脂の成分である”スクアレン”を洗い流す力が弱いそうです。
この特徴によって、皮脂が取られすぎるのを防ぎます。
ただし、洗いすぎには注意が…。
皮脂の成分のスクアレンを洗い流す力が弱い反面、細胞間脂質成分のコレステロールを
溶出させやすい性質があります(*4)。
この石けんを使って、しっかり洗っていたら…。
気づいたら、皮膚バリアを傷つける恐れがあります。
基本的には肌が弱っている場合、
石けん自体が刺激物質になることがあるので、
使わないほうがいい場合もあります。
石けんがアルカリ性で刺激物質になるということもありますが(手作り石けんの記事)、
それ以外にも理由があります。
*1) 石けん学のすすめ Anri krand くらんど「油脂と脂肪酸の組成」
http://www.sekkengaku.com/savon5.html
(2016-05-30参照)
*2) ウィキペディア 「油脂」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B9%E8%84%82
(2016-6-1 閲覧)
*3)安倍正彦他 「今日からモノ知りシリーズトコトンやさしい界面活性剤の本」
トコトンやさしい界面活性剤の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
*4)石けん百科 「洗顔石けんの選び方」
http://www.live-science.com/honkan/jissen/senganerabi.html
(2016-6-1 閲覧)