〜石けんってもちろんアルカリ性です〜
石けんを使用するならば、注意することとして、
・ 短時間で使用する
・ 薄い濃度で使用する
の二点があり、
使用するものとしては、
・ 無香料の単純な純石けん(”アルカリ性”)
を使用する
ということをご紹介させていたただいております。
※内容は重複した部分がありますが、
過去内容 石けんのススメ1〜4
石けんのススメ
石けんのススメ2
石けんのススメ3
石けんのススメ4
石けんのススメ5
石けんのススメ6
〜石けんが吸着しにくい科学的な理由があるのです〜
前回の石けんのススメ6にて、石けんはアルカリ性の界面活性剤であり、比較的きつい界面活性剤の部類になる反面、石けんがアルカリ性のおかけで皮膚表面への吸着は比較的少なくなるというお話をさせていただきました。
前回ご紹介しませんでしたが、陰イオン界面活性剤は、アルカリ状況下では吸着量が減少する科学的裏付けもあるようです。
ASのうち、SDSと略称されるラウリル硫酸エステルナトリウムは、髪にmg/g単位で、0.75(pH3)~0.4(pH12)くらい吸着残留することが知られています。*1)「洗剤・洗浄の事典」
重要なのはpHが3~5くらいが(0.75~0.58mg/g)吸着が大きく、9~11くらいは(0.45~0.43mg/g)小さいという事実です。つまりSDSの洗浄後の吸着残留は、弱酸性側で大きく弱アルカリ性側で小さいというデータです(*2)。
引用元: Anri krand くらんど
「石けんとのダイアローグ(補稿更新中)」
SDSは石けんとは異なるものとなりますが、石けんと同様な陰イオン界面活性剤です(あくまで石けんの代わりのモデルとしてお考えください)。このデータによってアルカリ性の状態では、皮膚に対する界面活性剤の吸着が少なくなることが分かります。また、石けんの場合、吸着してもファンデルワールス力や疎水的相互作用と呼ばれる弱い結合になるそうです(*2)。すすぎを念入りにしたらさらに数値が下がる可能性が考えられます。
しかしながら、根本的にアルカリ性の状態では吸着量が減るものの、吸着は0にはなりません。
ですが、石けんの場合は皮膚に付着しても皮膚表面の微生物によって分解され、脂肪酸、グリセリンとなります。さらに脂肪酸、グリセリンもさらに代謝されていきます(付着した脂肪酸が、皮膚に悪影響を与えるという説もあります。これについては機会があれば、ご説明してきたいと思います)。
仮に石けんが表皮のケラチンと結合してしまっても、薄い濃度であれば浸透せず垢となって落ちるだけだといわれています(*3, *4)。
余談ですが、SDSは、”ラウリル硫酸ナトリウム”ともいって、シャンプーなど様々なものに使われていました。比較的安価で、石けんよりも遥かに泡立ちやすい性質を持ちます。最近は、タンパク質変性作用が高いことで肌ダメージを起こしやすいイメージが出来上がっていることもあり、いわゆる”敏感肌”用の製品には使われていない成分となります(発がん性も認められていないので、洗剤としてうまく活用すればいいだけなのですが…)。
石けんの良い面ばかりをお伝えしてきましたが、そうはいっても石けんは、比較的きついアルカリ性です。
お肌にダメージがある方は、ピリピリして刺激物質になる場合があるので、様子を見ながら使ってください。
界面活性剤の吸着量は少なく、石けん自体が分解されるといっても、石けんを使う頻度が多くなればなるほど吸着する量が増えていきます。
気になる方は界面活性剤の使う頻度を減らすというという選択肢も合ったほうが良いかと思います。
石けんはアルカリ性でも意外と安全に使われる理由を説明しました。
ですが、デメリットが幾つかあるようです。
次回、ご説明します。
*1「洗剤・洗浄の事典」
*2 Anri krand くらんど
「石けんとのダイアローグ(補稿更新中)」,
http://www.sekkengaku.com/dia/jakusansei.html#s3-1
(参照2016-5-28)
*3 井波義博, (2013). 「富山大学学位論文 界面活性剤によって誘発される痒みとケラチノサイトによるhistamine産生い関する薬理学的研究」
*4 Scala J, McOsker DE, Reller HH., (1968) .
The percutaneous absorption of ionic surfactants. J Invest Dermatol. 50, 371-9.