次亜塩素酸水とは
前回の殺菌剤の種類は?手肌に優しい殺菌剤はあるの?にて、次亜塩素酸水について少しお話させていただきました。
今回、話題の弱酸性次亜塩素酸水について取り上げてみます。
(”弱酸性”の代わりに”微酸性”とも記載されています)
弱酸性次亜塩素酸水は、言葉の通り、pHが酸性状態の次亜塩素酸水です。
下記の図1のように次亜塩素酸水は、pHによって存在形態が変わります(*1)。
強酸性(pHが1〜3)の場合は、Cl2となり、塩素ガスが発生します。
反対にアルカリ性(pHが8以降)になると、イオン化されて陰イオンのClO-(次亜塩素酸イオン)が増えてきます。
pHがアルカリ性の”次亜塩素酸イオン水”は、一般的に水溶液中にナトリウムイオンが存在するため、”次亜塩素酸ナトリウム(水溶液)”となります。
この”次亜塩素酸ナトリウム”は、ハイターやミルトンの主な殺菌、漂白成分で、成分表示にも記載がされています。
さらにpHが 5付近の比較的穏やかな酸性(弱酸性)になると、イオン化されていないHClO(次亜塩素酸)分子が増えます。
下に作用機構を書いていますが、一般的にClO-よりもHClOが殺菌効果が強く、特にpH5〜6.5付近のものが殺菌力が最も高いとされています。
市販の”弱酸性の次亜塩素酸水”は、このpHでつくらています( *2)。
ちなみに、弱酸性次亜塩素酸水も成分表示に”次亜塩素酸ナトリウム”と記載されているものが多く見受けられます。
こちらもハイターと同様に水溶液中にナトリウムイオンが存在するため、成分的には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液となります。
何が違うかというと、先ほどご説明したようにpHが酸性に調節されていて、ハイターよりもイオン化されていないHClO(次亜塩素酸)分子が多く存在するものになるからです。
次亜塩素酸水のいいところ
・台所でも使える。肌に触れても問題が少ない
生体に対する安全性確認されている(*3-6)
⇒マウス、ラットを用いた経口投与、眼刺激試験、皮膚感作試験を実施したところ、水道水と安全性に差がないことがわかっています(その時に使われた塩素の濃度200 ppm)。
厚生労働省も安全性を確認済みです(*8)。
※消毒剤という記載がないものは、厚生労働省で認可したものではないので、医療などにおける感染症予防の手肌の殺菌・消毒剤としては使えません。
噴霧吸入しても問題ない(*3,*9, *10)。
⇒吸入した時に、体重、血液、肺などの異常がないとされている。
加湿器につかっても影響が少ない。
基本的には、次亜塩素酸分子(HClO)は不安定な分子で、有機物に触れるとすぐに分解されて水分子になります。水分子に戻るため、安全がかなり高いものになります。
・抗菌作用が広い(いろいろな種類でも使える)、カビ、ウイルスでも使える
⇒大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA ・緑膿菌・大腸菌 O157・サルモネラ菌などの細菌や、白癬菌、カンジダ菌等の真菌類の他、インフルエンザウイルス、ノロウイルス感染予防の実績があります(*3,7,10)。
50ppmの弱酸性次亜塩素酸水、15秒程度の漬け置きで菌が死滅することが確認されています(条件:上記菌液 約2×10^7 cfu/mL 2mL菌液、50ppm 弱酸次亜塩素酸水 1.8mL, *3)。
作用機構として、次亜塩素酸溶液は、弱酸性になると分子型の”HClO”の次亜塩素酸分子になります。
この分子は、細菌の細胞膜に反応せずに直接細菌内部のDNA、タンパク質を攻撃します。
アルカリ性の次亜塩素酸ナトリウム溶液に入っている次亜塩素酸イオン(ClO-)は細胞膜と同じ陰イオンのため、細菌内部に入りにくい性質があります。
ところが、次亜塩素酸分子(HClO)はイオン化されていないため、細胞内部に入り込み、次亜塩素酸ナトリウムよりも効率的に殺菌をします(図2が細菌の作用の様子)。
図2.細菌への次亜塩素酸の作用(*2)
ちなみに、HClOは、白血球が外来の異物を攻撃する時に出す成分にもなります。
生体のシステムでも使われているものなので、比較的安全だと思いませんか。
・脱臭効果がある
⇒生ゴミ処理場や肥料工場での脱臭効果の実績あり(*10)。
調理器具の殺菌の他に、手肌の殺菌、ドアノブなど様々なところにふりかけて使えます。すぐに殺菌効果がなくなるので、手肌にはうれしいところ。
また、加湿器にも使えるので、冬場のインフルエンザ対策にもいいかもしれないですね。
市販で比較的濃い濃度の次亜塩素酸水が市販されています。
通常、水で50〜100 ppm (@クリアだと 100倍〜200倍)に希釈して様々な場所の殺菌に使いますが、希釈した次亜塩素酸水は光や熱で分解されやすい性質があります。
日持ちをさせるためには、遮光性のスプレーボトルを活用してもいいかもしれません。
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参照文献
*1)丹保憲仁,小笠原紘一 (1999) 浄水の技術,101-106,技報堂出版
*2) 福崎智司(2010)次亜塩素酸ナトリウムを用いた洗浄・殺菌操作の理論 と実際調理食品の技術, 調理食品と技術, 1-4
*3)小野智子 (2014)「弱酸性次亜塩素酸水溶液の殺菌効果の基礎的検討および食品・畜産分野への適用に関する研究」8-9
*4) 試験報告書 (2001)ラットを用いたスーパー次亜水の経口投与試験, 岡山大学歯学部小児科, 社内資料
*5) 試験報告書 (2001)ラットを用いたスーパー次亜水の噴霧試験 ,岡山大学歯学部小児歯科 ,社内資料 .
*6) 試験報告書 (2001)ラットを用いたスーパー次亜水のラットを用いた皮膚刺激試験 ,岡山大学歯学部小児歯科 ,社内資料
*7)除菌水の水、殺菌効果調査資料
https://www.jokin.tokyo/characteristic.html
*8)ウィキペディア 微酸性電解水
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%AE%E9%85%B8%E6%80%A7%E9%9B%BB%E8%A7%A3%E6%B0%B4
(2016-06-15参照)
*9) 三宅真名 ,山下光治 (2003)ラットにおける噴霧弱酸性次亜塩素酸水吸入による血液一般及び生化学値に及ぼす影響,実験動物と環境,11,(1),42- 47.
*10) 鈴木大輔 ,野澤康平 ,米崎孝広 (2 0 13)中性電解水で加湿した空気供給によるラット亜慢性吸入毒性 ,実験動物と環境 ,21,(2),99-10 8.